定期診断の重要性

 

資産運用において、何に、どれだけ投資するかは重要な問題です。自分の投資目的やリスク許容度に相応しい資産配分を検討し、それに合わせて分散投資することが資産運用の基本だからです。しかし、分散投資をしたからといって、それで終わりではありません。むしろ、それからが本当のスタートとも言えるでしょう。

マーケットの変動に伴い資産配分も変化

株式市場や債券市場は日々常に変動しています。したがって、資産配分が時間の経過とともに本来あるべき姿から乖離してしまうことがあります。図表1は100万円を日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4つの資産に25%ずつ均等に投資して運用をスタートした場合の例です。仮にその後の1年間で日本株式と外国株式の価格が30%上昇し、逆に日本債券と外国債券の価格が10%下落したと仮定しましょう。

図表1 

日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4つの資産に25%ずつ均等に投資して運用をスタートし、その後の1年間で日本株式と外国株式の価格が30%上昇、逆に日本債券と外国債券の価格が10%下落したと仮定した場合の資産配分比率の推移。売買手数料および税金は無しと仮定。資産配分比率は一定の仮定に基づくものであり、将来の投資収益等の示唆あるいは保証をするものではなく、またその結果の確実性を表明するものではありません。
出所:ラッセル・インベストメント作成

その結果、当初は各資産に25%ずつ投資していた資産配分比率も変動し、日本株式と外国株式の比率はそれぞれ30%に増加する一方で、日本債券と外国債券がそれぞれ20%に低下してしまうことが分かります。この本来あるべき姿から乖離した資産配分をそのままにしておくと、想定以上のリスクを取った状態が続くことになってしまいます。逆に、日本株式や外国株式の価格が下落し、日本債券や外国債券の価格が上昇した場合には、日本株式と外国株式の比率が低下する一方で、日本債券と外国債券の比率が増加する結果、時価変動後の資産配分比率のままではポートフォリオ全体に期待できるリターンが想定よりも低い状態が続くことになってしまいます。

この乖離した資産配分比率を修正し、本来のあるべき資産配分に戻すことを「リバランス」と言います。リバランスを行うには二つの方法があります。一つは、配分比率が高まった資産の一部を売却し、その資金で配分比率が低下した資産に追加投資する方法です。図表1の例では、日本株式と外国株式をそれぞれ5万円売却し、その資金を日本債券と外国債券にそれぞれ5万円振り替えることで、本来の資産配分比率である各資産25%の状態に戻すことができます。もう一つの方法は、配分比率の高まった日本株式と外国株式を売却せず、新たに資金を投入することで元の割合に戻す方法です。この場合では、日本債券と外国債券にそれぞれ10万円を追加投資することで、本来の資産配分に戻すことができます。

「リバランス」のタイミングは?

ボーナス支給時期や年末時点など、あらかじめリバランスするタイミングを決めておく方法があります。また、機械的にリバランスを実施する方法もあります。例えば、資産配分比率に5%以上の乖離が生じた場合には必ずリバランスを行うといった方法です。

この場合のポイントはなるべく恣意性を排除することです。相場観に基づいてリバランスのタイミングを遅らせたりすると、短期的に成功することはあったとしても、中長期的に成功するとは限らないからです。また、リバランスには売買コスト等が発生するケースがあるため、頻繁に繰り返すと結果的に運用効率が低下してしまうことにも注意が必要です。

相応しい資産配分の変化

資本市場変動の影響を受けて、時間の経過とともに資産配分比率も当初決めたものから変化することは触れました。実はもう一つ時間の経過とともに変化するものが考えられます。年齢はもとより、自身を取り巻く環境、例えばその他の資産や収入の増減、家族構成の変化などによっても当初決めた投資目標やリスク許容度などが変化することもあるでしょう。したがって定期的に自分に相応しいと考える資産配分を求め直し、実際の資産配分との間に乖離がある場合には、新たな資産配分比率に合わせてリバランスを行うことが長期的な観点で必要と考えられます。

バランス型ファンドの活用

個人でリバランスを実施するのは難しい、あるいは時間がないという方には、バランス型ファンドを活用する方法が考えられます。あらかじめ定められた資産配分比率を維持するために、ファンドの中で自動的にリバランスを行う機能が内包されているものが大半だからです。自分に相応しいと考える資産配分に近似的なバランス型ファンドに投資をすることができれば、資本市場が大きく変動した場合でも自身で売買を行う必要がありません。ただし、バランス型ファンドの中には、市場変動に応じて積極的に資産配分比率を変更するものや、時間の経過とともに資産配分比率を徐々に変更する種類のものも存在するため、その選定にあたってはそれぞれの運用特性を事前に良く理解することが必要です。

定期健康診断としての運用実績測定と評価

資産配分の状況と併せて確認しておきたいことの一つに運用実績があります。ここで言う運用実績とは、単に何%上昇したとか、下落したということではありません。大切なのは市場平均、例えば日本株式ならTOPIX(東証株価指数)のリターンを上回ったのか、下回ったのかという視点です。運用実績を評価する際には、その要因分析も行うことができるように相対的な評価のための座標軸を持つことが有益です。ましてやこれまでの運用実績が良かったからといって、これから先も良いとは限りません。したがって、運用実績の評価にあたっては、かかりつけのお医者さんのようにファイナンシャル・アドバイザーなどの専門家の力を活用することも検討に値すると考えられます。